宝石商になった気分「ヴァン クリーフ&アーペル」でダイヤモンドのグレードを鑑定

「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS以下、ヴァン クリーフ)」が支援する宝石やジュエリーに関して学ぶ「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校(以下、レコール)」が来年2月、東京で開講します。「レコール」は2012年、パリ・ヴァンドーム広場に創設され、13年に日本で14日間のプログラムを開講しました。以降、香港やドバイ、ニューヨークなどでも講義が行われる世界を旅する学校でもあります。日本における2回目の開講に先立ち、ヴァン クリーフ銀座メゾンでレコールの体験会が行われました。

講義の内容はダイヤモンドについて。宝石の代表格であるダイヤモンドの組成から性質、グレーディングまでを学ぶというものです。この体験会のためにフランスからオリヴィエ・セグラ(Olivier Segura)=レコール講師兼サイエンティフィック ディレクターと、宝石鑑定士で美術史家であるマリー・ロール・カシアス・デュラントン(Marie-Laure Cassius-Duranton)=レコール講師が来日しました。

ダイヤモンドの組成からレクチャーが始まりました。通常宝石は、複数の元素で組成されていますが、ダイヤモンドは炭素だけ。ダイヤモンドの生成には炭素と数千気圧の地圧、摂氏1000度以上という条件が必要で、地下150km以上の地中で核ができます。それがキンバリー岩(カンラン石と雲母を主要構成鉱物とする火成岩)のパイプを通して上昇した場所がダイヤモンド鉱山。ダイヤモンド鉱山といえば、まず南アフリカやボツワナを思い浮かべますが、ナミビアやロシア、カナダなどにもあります。鉱山によりますが、ダイヤモンドの採掘量の80~95%が工業用で研磨器具やドリルなどの工具に使用されるそうです。残りがジュエリーになるのですが、その中でも高品質なものは全体の0.15%とごくわずか。それらが、ファインジュエリーやハイジュエリーになるわけです。

ダイヤモンドは今では最も硬い石だと知られていますが、発見されてから誰もカットできないため‟克服できない石“と呼ばれていたそうです。ダイヤモンドの切断にはダイヤモンドが必要だと発見するのに時間がかかり、ヨーロッパでは中世の終わりからダイヤモンドのカットが可能になりました。ダイヤモンドの結合は特有で、炭素原子5つが立方体状に3次元に構成されているため最強の硬度になります。

ダイヤモンドの原石は正八面体でへき開性を持っています。昔は内包物がどこにあるか原石をじっくり観察してからカットしていましたが、今ではスキャンソフトを使用して内包物を避けてベストな方法でカットできるようになっているようです。テクノロジーは宝石業界にも進歩をもたらしています。ダイヤモンドは「ラパポルト・ダイヤモンド・リポート(RAPAPORT DIAMOND REPORT)」という価格リストがあり、原石をカットする際に価格も計算できるというから、便利なものです。原石をカットした後は研磨され、ダイヤモンドルースになります。

ダイヤモンドの品質を決める4C(カラー、カラット、クラリティー、カット)という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。これはアメリカ宝石学会(GIA)が定めた基準で、ダイヤモンドの価格はこれによって決定します。カラーはD~Zまで。Dは無色で、下に行くほど黄味が強くなります。Z以下のものはファンシーカラーという色付きのダイヤモンドになります。ファンシーカラーのダイヤモンドはピンクやブルー、イエローなどさまざまな色がありますが、バイオレットとレッドが珍しいカラーです。

クラリティーはフローレス(FL)が無傷で、インターナルフローレス(IF)はほぼ無傷、ベリー・ベリー・スライトリー・インクルーデッド(VVS)は微小の内包物、スライトリー・インクルーデッド(SI)は少々の内包物、インクルーデッド(I)は内包物ありで、肉眼で内包物が見えます。

カラットはダイヤモンドを図る重さの単位で1カラットは0.2グラム。なぜ0.2グラムになったかというと、イナゴマメの種1粒の重さが由来です。重さにばらつきがなく、世界中どこでも、年中安定しているという理由でダイヤモンドの計量に使用されていたそうです。

カットは、ダイヤモンドの輝きを決定する重要な要素です。世界的に最も人気があるのはラウンドブリリアントカットで57面あり、プロポーションがよいほどよく輝きます。エクセレント、グッド、フェア、プアーというグレードがあります。

これらはGIAなどの鑑定機関による鑑定書に明記され、石のIDカードとなるわけです。

いよいよグレーディング体験です。ダイヤモンドのグレーディングには10倍のルーペとツイザーを使用します。色は、2つに折った白い紙の上にグレーディングするダイヤモンドを置き、色の基準となるマスターストーンを隣に置いて色の比較をします。クラリティーはツイザーでダイヤモンドルースのガードル(縁)をはさみ、利き目にルーペを近づけてじっくり見ます。ツイザーでダイヤモンドを挟むのも難しく、なかなかルーペの焦点を合わせられませんでしたが、宝石商になった気分でした。最後に、講師のセグラさんから参加者一人一人にコース修了証が渡されました。賞状をもらうのは学生時代以来。新しいことを学ぶ楽しみと特別感や達成感が感じられる体験会でした。